句誌 にひはり

★印 草風館版『コタン』には掲載されていないが、掲載を管理人が確認したもの。

※印 草風館版『コタン』に掲載されているが、その号への掲載を確認できなかったもの。


大正十三年二月号

塞翁が馬にもあはで年暮れぬ

大正十三年三月号

電燈が消えても春の夜なりけり

大正十三年四月号

日永さや背削り鰊の風かはき

大正十三年九月号

夜長さや電燈下る蜘の糸

コスモスヤ恋ありし人の歌思ふ

大正十三年十一月号

かさこそと落葉淋しく吹かれ(けり)

乾鮭や残留の漁夫の思はれつ

大正十三年十一月号

落林檎石の音して転けり 

凍林檎石の音してころげけり 

大正十四年一月号

いとし子の成長足袋に見ゆる哉 

ぬかる道足袋うらめしう見て過ぎぬ 

大正十四年二月号

魚洗ふ手真赤なり冬の水

大正十四年四月号

畑打やキャベツの根から出し若葉 

※95年版『コタン』によると、この句は『にひはり』昭和2年の4月号掲載となっているが、これは大正14年の4月号の間違いであり、大正14年1月に開かれた「余市にひはり句会一月例会」で詠まれたものである。

大正十四年五月号 「違星北斗氏」


大正十四年七月号

シャボン箱置いて団扇に親しめり

寒月やとんがった氷柱きっらきら

熊の話(講演記録)

大正十四年八月号

夏の野となりてコタンの静かゝな

熊の胆の煤けからびて榾あかり

大正十四年九月号

大熊に毒矢(ぶし)を向けて忍びけり

新酒のオテナの神話(ゆうかり)きく夜かな

――オテナ――アイヌの酋長

昭和二年四月号

畑打やキャベツの根から出し若葉 ※

※95年版『コタン』によると、この句は『にひはり』昭和2年の4月号掲載となっているが、確認できず、かわりに大正14年の4月号に掲載されていた。


※95年版『コタン』より