昭和二年十二月二巻十二号
短歌 アイヌの叫び
アイヌ! と ただ一言が なによりの
侮蔑となって 燃える憤怒だ
「ナニッ! 糞でも喰へ」と 豪放に
どなった後の 寂しい沈黙
限りなき その寂寥をせめてもの
悲惨な酒に まぎらさうとする
獰猛な 面魂を よそにして
弱い淋しい アイヌの心
単純な 民族性を 深刻に
マキリで刻む アイヌの細工
たち悪るく なれとのことが 今の世に
生きよといへる ことに似てゐる
昭和三年一月 三巻一号
※95年版『コタン』より