第六回 新短歌座談会 


大友秋牧 稲畑笑治 後藤勇 石田さだを 近藤輝越 美津井勇 野村保幸 並木凡平

(前略)

(凡)どうです彗星的に現れた彼の違星北斗君に就いてなにか。

(輝)違星さんの作品に就いて近ごろ非常に幻滅を感じてきました。

(笑)同感々々。

(美)未見ですが歌を通して見た違星君は大変に大和民族的なねつ情のある歌人だと思つてゐます、だが最近の作品のどれもが極端に誇張し過ぎてゐてさつぱり駄目ですね一時は中村孝助氏とともに注目された人ですのに。

(さだ)そう、僕なんかも一時作品には感心させられましたが此の頃の作品はどうも好きになれません。

(保)なぜ違星さんがはじめて歌壇に現出したころのような自然らしい歌が近ごろ生れないのかと不思議に思つております。

(凡)彼の処女作「握り飯腰にぶらさげ出る朝のコタンの空になく鳶の声」当時の詩的情感が今日枯死した感のあるのは甚だ物足りない。民族的偏見と、議論の一説に近い叫びを余りに強く悪どく出しすぎてるの感がある然し理論のしっかりした点は将来期待していゝと思ふ。

(後略)