校正を終へて   西川文子

自働道話 大正十四年三月 一三一号


「校正を終へて」

十七日から廿日まで千葉県群馬県へ夫は講演に行き、家も無人なので、私は水道橋と阿佐ヶ谷とを毎日あき/\するほど往復しています。

 幸に額田さんと違星さんとが事務を大変に手伝って下さったので助かりました。二人とも本当に感心な青年です、違星さんはアイヌの方ですが、絵も文筆も俳句なども上手な珍らしい人で、北海道の余市から阿佐ヶ谷まで来るのに牛乳一合買ふたきりで弁当は一度も買はずに来たほどの人です。(神保院にて文子。十八日)

注「文子」は西川光二郎の妻・西川文子


※初出誌より。薄い青字部分は95年版『コタン』「くさのかぜ」に収録されていない。