コクワ取り
たった独で山奥に入る。淋しいが独は気持がよい。私は常に他人に相槌を打つ癖がある。厭なのだがしかたない、性分なのだから。けれども独になった時は相槌を打つ様な厭な気苦労から逃れて気楽になる。
だから淋しい中にも一人になった時は嬉しい。
コクワなんてどうでもよいのだ。
※テキストは95年版『コタン』より