自働道話の短歌


大正十三年十一月 一二七号

外つ国の花に酔ふ人多きこそ
菊や桜に申しわけなき
1
大正十五年十二月 一五二号
幽谷に風嘯いて黄もみじが、
苔ふんでゆく我に降りくる
2
むしろ戸にもみじ散りくる風ありて
杣家一っぱい煙まわりけり
3
秋雨の静な沢を炭釜の
白いけむりがふんわり昇る
4
干瓢を贈ってくれた東京の
友に文かく雨のつれゞゝ
5
昭和三年二月 一六六号
俺のつくこの鐘の音に新年が生れて来るか精一っぱいつく 6
新生の願は叶へと渾身の力を除夜の鐘にうちこむ 7

 ※95年版『コタン』「自働道話」より