浮氷鴎が乗って流れけり
春めいて何やら嬉し山の里
大漁の旗そのまゝに春の夜
春浅き鰊の浦や雪五尺
鰊舟の囲ほぐしや春浅し
尺八で追分吹くや夏の月
夏の月野風呂の中で砕けけり
蛙鳴くコタンは暮れて雨しきり
伝説の沼に淋しき蛙かな
偉いなと子供歌ふや夏の月
新聞の広告も読む夜長かな
夜長さや二伸も書いて又一句
外国に雁見て思ふ故郷かな
雁落ちてあそこの森は暮れにけり
十一州はや訪れぬ初あられ
まづ今日の日記に書かん初霰
雪除けや外で受け取る新聞紙
流れ水流れながらに凍りけり
塞翁が馬で今年も暮れにけり
雪空に星一つあり枯木立
※95年版『コタン』より