動物 キーワード歌集


「熊」


『医文学』大正15年10月1日号

またしても熊の話しやキビ果入る


『新短歌時代』昭和2年12月号

熊の胆で助かったのでその子に熊雄と名づけた人もあります


『小樽新聞』昭和3年5月12日

熊の肉、俺の血になれ肉になれ赤いフイベに塩つけて食ふ

岩崎のおどは今年も熊とった金毛でしかも大きい熊だ

熊とった痛快談に夜はふける熊の肉食って昔をしのぶ


『志づく』昭和3年4月号

熊の胆で助かったのでその子に熊雄と名附けし人もあります


『コタン』「私の短歌」昭和5年5月

久々で熊がとれたが其の肉を 何年ぶりで食うたうまさよ

アイヌには熊と角力を取る様な 者もあるだろ数の中には


「犬」


『小樽新聞』昭和2年12月30日

ガッチャキの行商薬屋のホヤ/\だ吠えてくれるなクロは良い犬


「豚」


『志づく』昭和3年4月号

逃げ出した豚を追っかけて笑ったゝそがれときのコタンにぎやか


ゴメ(カモメ)」


同人誌『コタン』「コタン吟」昭和2年8月10日

伝説のベンケイ・ナツボの磯のへに かもめないてた なつかしいかな

ゴメ/\と声高らかに唱ふ子もうたはれる鴎も春のほこりよ


『小樽新聞』昭和2年10月7日

伝説のベンケイナッポの磯の上にかもめないてた秋晴れの朝


『小樽新聞』昭和3年4月8日

豊漁を告げるにゴメはやってきた人の心もやっとおちつく


『志づく』昭和3年4月号

伝説のベンケイナツボの磯のへにごめがないてたなつかしい哉

人様の浮世は知らず。今日もまた沖でかもめの声にたはむる


『コタン』「私の短歌」昭和5年5月

大漁を告げようとゴメはやって来た 人の心もやっと落ち着く

今年こそ鰊の漁もあれかしと 見渡す沖に白鴎飛ぶ

人間の仲間をやめてあの様に ゴメと一緒に飛んで行きたや

ゴメゴメと声高らかに歌ふ子も 歌はるるゴメも共に可愛や


「鳶」


『小樽新聞』昭和2年10月25日

握り飯腰にぶらさげ出る朝のコタンの空でなく鳶の声


『小樽新聞』昭和2年12月4日

握り飯腰にブラさげ出る朝のコタンの空になく鳶の声


『新短歌時代』昭和2年11月号

ニギリメシ腰にぶらさげ出る朝のコタンの空でなく鳶の声


「ケマフレ」


『小樽新聞』昭和3年4月11日

水けってお尻ふり/\とんでゆくケマフレにわいた春のほゝえみ

建網の手あみのアバさ泊まってて呑気なケマフレ風に吹かれる


『小樽新聞』昭和3年5月2日

シャモの名は何といふかは知らないがケマフレ鳥は罪がなさそだ

ケマフレはどこからくるかいつもの季節にまたやってきた可愛水鳥

人さまの浮世は知らぬけさもまた沖でケマフレたわむれてゐた

人間の仲間をやめてあのやうなケマフレと一しょに飛んでゆきたい


『志づく』昭和3年4月号

シャモの名でなんと云ふのか知らないがケマフレ(足赤)テ鳥は罪がなさそだ


「カッコウ」


『小樽新聞』昭和3年8月29日

カッコウとまねればそれをやめさせた亡き母恋しい閑古鳥なく


『コタン』「私の短歌」昭和5年5月

カッコウと鳴く真似すればカッコウ鳥 カアカアコウととどまついて鳴く 80

迷児をカッコウカッコウと呼びながら メノコの一念鳥になったと      註、メノコは女子

「親おもふ心にまさる親心」と カッコウ聞いて母は云ってた


「ホトトギス」


『志づく』昭和3年4月号

朝寝坊の床にも聴かれるコタンでは安々きかれるホトゝギスの声


「鮭」


『小樽新聞』昭和2年10月25日

暦なくとも鮭くる時を秋としたコタンの昔慕はしくなる


『新短歌時代』昭和2年11月号

暦なくとも鮭来る時を秋としたコタンの昔 思ひ出される


『小樽新聞』昭和2年12月4日

暦なくとも鮭来る時を秋としたコタンの昔したはしきかな


『志づく』昭和3年4月号

暦なくとも鮭来るときを秋としたコタンの昔したはしいなあ


「鰊」


『コタン』「私の短歌」昭和5年5月

暦無くとも鰊来るのを春とした コタンの昔したはしきかな