老いまさる母親早く袋掛の出面に通ふみじめな六月
淋しげにゐろりのそばで物思ひする父を見る貧しい六月
打ちとけた夕げの時のたのしさよ、ほゝゑむ父の慈愛にひたる
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阪妻の型をまねする子供等の、元気は俺のどこにもないのだ
病弱な俺だ、俺、俺、この頃は見る人毎にあこがれを持つ
鉢植の忘れな草はしをれたり、病める我身のはかなきを思ふ
生花の日毎にしをれ行くがごと、われの命も短かくあるか
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あれも、これもと、薬をのめど、のむ程に、力は失せて見る影もなし
いとやすく、死行く人を思ふかな、病むことごとの辛さ苦しさ
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病む故に、母が薪割るその音を、二階にて聞く淋しい俺だ
病む故に親しき者も去り行くか、人の心の冷さを思ふ
むらさきにけぶる朝、朝、草香ふ、まじめになりて祈りても見る
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喰らうては寝ね喰うては又寝る、豚のからだの太さを思ふ
毎日の俺のくらしはブタのごと、豚にも劣る俺の弱さよ
※これは中里篤治(凸天)の作である。