病床にて    凸天


老いまさる母親早く袋掛の出面に通ふみじめな六月

淋しげにゐろりのそばで物思ひする父を見る貧しい六月

打ちとけた夕げの時のたのしさよ、ほゝゑむ父の慈愛にひたる

          ○

阪妻の型をまねする子供等の、元気は俺のどこにもないのだ

病弱な俺だ、俺、俺、この頃は見る人毎にあこがれを持つ

鉢植の忘れな草はしをれたり、病める我身のはかなきを思ふ

生花の日毎にしをれ行くがごと、われの命も短かくあるか

          ○

あれも、これもと、薬をのめど、のむ程に、力は失せて見る影もなし

いとやすく、死行く人を思ふかな、病むことごとの辛さ苦しさ

           ○

病む故に、母が薪割るその音を、二階にて聞く淋しい俺だ

病む故に親しき者も去り行くか、人の心の冷さを思ふ

むらさきにけぶる朝、朝、草香ふ、まじめになりて祈りても見る

           ○

喰らうては寝ね喰うては又寝る、豚のからだの太さを思ふ

毎日の俺のくらしはブタのごと、豚にも劣る俺の弱さよ


※95年版『コタン』より

※これは中里篤治(凸天)の作である。