愛国思想   キーワード歌集


※北斗の思想の中には、現代の我々では違和感を感じるような部分もあります。戦前という時代、「国家のために役に立つ人間にならねばならない」といった風潮が大前提としてあり、そのため、北斗も「今は蔑視されている同族も、修養し自覚して、はやく国家に必要とされる人間にならねばならない」と考えていました。これには金田一京助や西川光次郎、後藤静香のような和人の指導者(英国人のバチラーも似たようなものですが)の影響が大きいと思います。
ただ、北斗は金田一はじめ多くの和人が考えていたように「《滅び行く》アイヌは和人と同化するしかない」というのではなく、アイヌがアイヌとして、そのアイデンティティを持ったまま、日本の欠かせざる一員になねばならないと思っていたと思います。


『自働道話』大正十三年十一月号

外つ国の花に酔ふ人多きこそ
菊や桜に申しわけなき


同人誌『コタン』「コタン吟」昭和2年8月10日

アイヌは単なる日本人になるなかれ神ながらなる道にならへよ

まけ惜しみも腹いせも今はなし唯日本に幸あれと祈る


『新短歌時代』昭和3年1月号「淋しい元気」

はしたないアイヌだけれど日の本に生れ合した仕合せを知る


『志づく』昭和3年4月号

アイヌは単なる日本人になるじゃない神ながらの道に出て立て

まけ惜みも腹いせも今はない只だ日本に幸あれと祈る

はしたないアイヌだけれど日の本に生れたことの仕合せを知る


『コタン』「私の短歌」昭和5年3月

はしたないアイヌだけれど日の本に 生れ合せた幸福を知る